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2015年1月26日月曜日

2015年1月25日~M作~

2015125日。


新行橋病院ICU主任本田稔先生の講義を、研修医Mは人一倍真面目に受けていた。

 


研修医M:そろそろ講義も終盤戦か・・ふー。



 

講師:じゃあ代表者5人でロールプレイしてみましょう。患者の問診する人、診察する人、記録する人に分かれてね。


 

研修医M:ロールプレイか。参加者40人くらい、確立にして5/40だけど、俺が一番下
ぱとであると考えると・・あてられる確率100%かな・・・


 

当院ICU主任:じゃあとりあえずM作先生ねー。

 


研修医M:はーい(やっぱりー涙)

 


~メンバー集合~

 


メンバーA:じゃあMは記録係ね。

 


研修医M:なんだー、記録ですか、余裕です!紙に書くんで、ちょっとペン貸してください。


 

メンバーA:ペンいらないよー、前の黒板に書いてね(にっこり)

 


研修医M:なんだと・・・!?


 

突然動揺し始める研修医M。実は研修医Mは、漢字が大の苦手。医局でも、たびたび漢字攻撃を受け、いじめられていた過去を持つのである。みんなの前で文字を書くなんて、まさに地獄、わからない漢字が出てくるに決まっている!ロールプレイが始まる直前にはもう、研修医Mは震え上がっていた!

 


講師:じゃあもうスタートね。


 

研修医M:(ちょっと!?まだ心の準備が・・くそっ!やるしかないのか・・)

 

 


メンバーA:どうされました?

 


患者役:苦しい、息がくるしい、今から・・

 


研修医:えっと、主訴は突ゼンの呼吸苦っと(カキカキ)・・ゼン、ゼン、然?・・


 

患者役:術後10日目で、さっきまでリハビリしていました。はぁはぁ。抗凝固薬を術後から飲んでいません。

 


研修医M:おっと、まだ書き終わってないのに!ゼン、ゼン、んー、とりあえず然でいいのかな。いいよね!?たぶんあってる、絶対あってる!こんなとこで立ち止まるわけにはいかない!

なになに、次は、抗ギョウ固薬、ギョウ、ギョウ、疑?なんか違う!なんか違うけど、どこが違うかわからん!いきなり中ボスクラスの漢字が来てしまった汗・・助けを求める他ないか・・しょうがない、いつもやってる平謝り攻撃だ!


 

研修医M:本当にすいません、“ギョウ”がわかりません、馬鹿ですいません(ぼそぼそ)

 


メンバーB:そうなの?こう書くんだよー:凝(カキカキ)

 


研修医M:ありがとうございます(やさしい!そして俺、惜しい!90%正解してるじゃん!ちょっと点が足りないだけじゃん)


 

会場:わからんかったらカタカナでもいいよー笑(クスクス)


 

研修医M:はい、すいません、漢字苦手なんですよー(ちくしょう!ほとんど正解だったのに!てかみんなホントに分かるの、分かってるふりしてんじゃないの!?いや、こんなのでへこたれてはダメだ、先はまだ長い!ひとつひとつクリアしていかなければ・・)


 

患者役:大腿骨頸部骨折でー・・・


 

研修医M:大腿骨頸部骨折!今整形外科を研修してるし、さすがにわかる!大腿骨頸部、頸部、ケイ部・・あれ、ケイって頸でいいんだっけ?頚って書くこともないっけ?てか頸=首じゃん、足に首っておかしくない!?確かに大腿骨ケイ部って大腿骨の首っぽいけど・・・。しまった!無駄な雑念で混乱してしまった!余裕と思ってたらこいつも中ボスクラスだったか!

 


患者役:ごにょごにょ

 


研修医M:おいおい、全然黒板の方みてないで進めてるよ!このままじゃ間に合わない、やばいよやばいよ!くそー、こうなったら

 


大腿部 骨折(カキカキ)


 

これでどうだ!いま大切なのは頸部とか転子部とか骨折の場所ではない!ましてや漢字なんてどうでもいい!必要であるのは整形外科の術後であるという情報!細かいトコなんて誰も見てないはず!空欄にしてもばれないやろう!


 

会場:しーん。


 

研修医M:やっぱり、みんな見てないじゃん!これが今できる俺のベストの選択!ナイス
俺、やったぜ俺!残りもうまくすり抜けてやるわ!


 

講師:では、電話で報告する内容を黒板に書いてみましょう。まずは自分の所属を名乗っ
て。報告するのは6病棟の・・・何さんにしましょうか?


 

研修医MG藤にします!


 

講師:わかりました、G藤さんですね。


 

研修医M:カキカキ(セーフ!ファインプレイだ、俺!あぶない、あぶない。ここで知らない漢字の苗字を出されたら一発アウトやった!自分の名前を差し出すことで事なきを得たわ、さすがM作!)


 

講師:報告者はG藤さんで、じゃあ患者さんの名前は・・・池尻さんにしましょうか。


 

研修医M:イケ、ジリ・・・!?(なんと、しまった!イケジリなんてぱっと出てこないぞ!患者の名前まで俺が決めればよかった!不覚!完全俺のミス!少し気を抜いたのがいけなかったか・・)

 


研修医M:(ちくしょう、でも悔やんでる暇はない、大丈夫、落ち着け。閃け、俺!イケジリ・・・大丈夫、いけそう、いけそう!イケジリ、池ジリ、池ジリ、ジリ・・・しり、おしり、おしり、おしり・・・わー全然わからん、完全にラスボスクラスだ!・・・くそー・・もう打つ手がない・・)


 

メンバーC:なにー、また漢字わかんないのー、こう書くんだよ!


 

研修医M:すいません(ちくしょう、万事休すか・・・)


 

池尼(カキカキ)

 


会場:違うよ!それ“あま”やん!笑(クスクス)メンバーC、全然だめじゃーん笑

会場:フォローで出てきてそれかよ

会場:漢字できなさすぎー、ははは笑


 


メンバーC:てへ。


 

研修医M:!?(ん、なにこれ、漢字できないっていう矛先が俺からメンバーCに変更されている、ラッキー!?これはラッキーじゃないか!!何とかこの地獄を切り抜けたぞ!ばんざーい、ばんざーい!)


 

講師:はい、よくできましたね。今日はこれで終わりです、お疲れ様でした。


 

会場:ぱちぱち(拍手)



 

~終了後~

 


研修医M:ふー、終わった!切り抜けた!


 

副医院長:おい、M作。


 


研修医M:はい、なんですか?(もしかして褒めてもらえるのか、確かに今日は日曜日、このためだけに病院にやってきて、ロールプレイまでやって今日は俺頑張ったもんね!)

 


副医院長:漢字・・・ひどすぎ。


 

研修医M:!?・・・・・・本当にすいませんでした。


 

副医院長:・・・・。


 

研修医M:・・・・てへ。


 

副医院長:馬鹿たれ笑


 

 


~研修医Mの修行はまだまだつづくのである~

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